
転生したら滅びる家の三女でした ~十年後の処刑を回避します~
北の湿地に、渡りの鳥が下りてきた。秋の狩りの朝、兄ギルベルトは賭けのとおり、黒馬グラウを厩に残し、遅くて動じない鹿毛のロートで出ていく。馬に乗れないセラは、屋敷で一日、帰りを待つしかない。兄は、馬から落ちずに、この秋を越せるのか。日程表の一行目に打った丸を見ながら、セラは雁の声を数えるのをやめた。

北の湿地に、渡りの鳥が下りてきた。秋の狩りの朝、兄ギルベルトは賭けのとおり、黒馬グラウを厩に残し、遅くて動じない鹿毛のロートで出ていく。馬に乗れないセラは、屋敷で一日、帰りを待つしかない。兄は、馬から落ちずに、この秋を越せるのか。日程表の一行目に打った丸を見ながら、セラは雁の声を数えるのをやめた。

十四日目。分銅を三つ全部載せても、皿は下がったまま戻らない。チビは、卵込みで百三十グラムを超えた。測りの店の親父は、一言で鍛冶屋を指した。南の門の手前、昼でも炉の口が赤い店で、新しい百グラムを一つ打ってもらう。ロウが両手で竿を吊るしている間に、チビは上着の裾から出て、入口の脇の鉄くずの箱へ歩いていった。

河港でいちばん口の悪い金貸し、ヴィナ。帳場の奥で、干した魚をかじりながら、アデルの頭の先から靴の先までを値踏みする。倉の塩は八か月動かず、麻は売られ、借財は三口。担保になるものは何も残っていない。アデルは、担保の話をしない。先に口にしたのは、ヴィナのほうだった。「あんたの名前は、河港では高く売れる」。
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12作品

北の湿地に、渡りの鳥が下りてきた。秋の狩りの朝、兄ギルベルトは賭けのとおり、黒馬グラウを厩に残し、遅くて動じない鹿毛のロートで出ていく。馬に乗れないセラは、屋敷で一日、帰りを待つしかない。兄は、馬から落ちずに、この秋を越せるのか。日程表の一行目に打った丸を見ながら、セラは雁の声を数えるのをやめた。

十四日目。分銅を三つ全部載せても、皿は下がったまま戻らない。チビは、卵込みで百三十グラムを超えた。測りの店の親父は、一言で鍛冶屋を指した。南の門の手前、昼でも炉の口が赤い店で、新しい百グラムを一つ打ってもらう。ロウが両手で竿を吊るしている間に、チビは上着の裾から出て、入口の脇の鉄くずの箱へ歩いていった。

河港でいちばん口の悪い金貸し、ヴィナ。帳場の奥で、干した魚をかじりながら、アデルの頭の先から靴の先までを値踏みする。倉の塩は八か月動かず、麻は売られ、借財は三口。担保になるものは何も残っていない。アデルは、担保の話をしない。先に口にしたのは、ヴィナのほうだった。「あんたの名前は、河港では高く売れる」。

石臼ができた日、街道の行商サシャが荷車を引いてやってくる。口が回る。値段に細かい。しろ苔、一袋三十。ミアは「はい」と言いかけて、ネイの顔を思い出す。仕入れ値を考えろ、とサシャは笑った。値切られる側に回ったら、最初の値に何を入れておくか。咳の止まらない行商人に、ミアは新しい臼で最初の薬を挽く。

六周目。香炉は、消すのではなく、出す。杯は卓に置き、花は捨て、窓は閉める。三つの毒を、鐘が十になる前に全部潰した。まだ生きている。だから私は、知らないことを一つ、知りに行った。兄が夜、私の部屋を出たあと、どこへ行くのか。狭い階段の上で、背中に何かが触れた。

探索者の平井勉――ベンと呼ばれている――は、十年目の堅実な男だ。三年ごとの資格更新に、三年ごとに同じ時刻に来る。今回の書類は、一か所だけ前と違っていた。緊急連絡先の欄。黒木は、その違いを覚えている。覚えているが、訊かない。九月十八日、午後六時。第七層から十人が上がってくる日でもあった。
作品の棚と、作る人のための書庫(辞典・技法・設計書)。