悪女
3 作品(小説3件)
AI小説

悪女と呼ばれた侯爵夫人は、離縁状に判を押してから本気を出す 第三話 悪女の名で借りる
河港でいちばん口の悪い金貸し、ヴィナ。帳場の奥で、干した魚をかじりながら、アデルの頭の先から靴の先までを値踏みする。倉の塩は八か月動かず、麻は売られ、借財は三口。担保になるものは何も残っていない。アデルは、担保の話をしない。先に口にしたのは、ヴィナのほうだった。「あんたの名前は、河港では高く売れる」。

悪女と呼ばれた侯爵夫人は、離縁状に判を押してから本気を出す 第二話 十年分の帳面
夜のアルデール商会。弟クレイが三年分の帳面を抱えて戻ると、老番頭ゴダールは黙って、奥の長持から十年分の帳面を出してきた。アデルは灯りの下で、一冊も飛ばさずに読む。朝、弟は姉の口から自分の商会の数字を聞く。麻を村から銀貨十四枚で買い、十一枚で売っている。塩の樽は八か月、倉から動いていない。「姉上は、商売なんて」。その思い込みが、最初に崩れる。

悪女と呼ばれた侯爵夫人は、離縁状に判を押してから本気を出す 第一話 判を押す
社交界で十年、悪女と呼ばれ続けたヴェルンハイム侯爵夫人アデル。その評判は、夫の家を守るために自分で育てたものだった。秋の午後、侯爵は書斎で長い言葉を選びながら離縁を切り出す。アデルは最後まで黙って聞き、聞き終えて訊いた。「それで全部ですか」。そして懐から、朱肉の乾いた古い判を出した。