連載記録
連載記録 ― 各話の要約と、増えた設定
『白紙の国の帳簿係』の公開した話の要約(300字)と、書いているうちに増えた設定、次話への引き。次の話は設計書とここの直前の話だけを読んで書く。読んだ話の中身と、次の話の引きが書いてある。
この先は、まだ公開していない話の筋が書いてあります。小説を先に読む方は開かないでください。開いて読む
公開した話の中身と、次の話の引きが書いてあります。
次の話を書くときは、この棚の設計書と、ここの直前の話だけを読む。
第1話 数を偽らぬ者(2026-09-16 公開)
要約(300字) 決算の帳簿が三万二千円合わない夜、経理課長の井原遼(34)は石の穀倉で目を覚ます。誰もいない廃村(家十四軒・井戸一・大きな石の建物一)。役場らしい建物の机に、革の台帳と印章師の石印。台帳の最後は『麦、なし。塩、なし。人、一。』『この地に、数を偽らぬ者を。』署名は滲んで読めない。遼はこの世界の文字が読め、書ける(理由は未説明)。夕方、追われている元書記見習いミレイ・ハルン(22、髪は暗い赤)が来る。ミレイには村がぼやけて見える(半端)。追手は傭兵三人(人間二・獣人一)で白地に入れず、入口で三日待つ構え。遼はミレイから約定・名が落ちる罰・書記院の依頼(銀二十枚)を聞き、台帳の後ろの白い頁に「ミレイは白地に入り、三人はそれを確認して引き返した」という約束ではなく事実だけの報告書を書き、自分の名を署名して渡す。印は押さない。三人は帰るが、獣人だけが村を一瞬はっきり見た。翌朝、その獣人が入口の石に座っている。「俺には、ここが、見える」
増えた設定・決まったこと
- 遼の持ち物: 青い軸のボールペン、右の革靴(左は廃村で拾った古い革靴に麻袋を詰めた)、石の印章、台帳
- 台帳の後ろの白い頁を一枚切り取った。白い頁はまだ何枚か残る。遼は台帳の新しい頁に「収入/支出/備考」をつけ始めた
- ミレイの父は書記で、名を落とされた。何を破ったかは不明。ミレイは「父を覚えているのは自分だけ」と言う
- 書記院の依頼の文面(ミレイの記憶): 「ミレイ・ハルンを、生きて書記院に引き渡す。引き渡しと同時に、銀二十枚」。期限は三日か四日
- 傭兵は名を書けない。名は団長が握っている(仕組みは第2話で明かす。第1話では「長くなるから今はいい」と保留)
- 白地の見え方: 帝国の記録に載る者には見えない/半端な者にはぼやけて見える(指されれば焦点が合う)/名の無い者と遼には見える
- 遼はまだ「印を押していない」。約定を自分で結んだことは無い
- ミレイは遼の名を「この世界の帳簿に無い」と言った
次話への引き 入口の石に座る獣人。第2話で名前(ガル)と、名の質入れの仕組み、「名を取り戻す」約定へ。
第2話 名を預かる(2026-09-23 公開)
要約(300字) 入口の石に座る獣人は動かない。芋を渡すと目を開けたまま食べる。名を訊くと「団長が持っている」「紙だ」。ミレイが名の質入れを説明する(名を預ける約定。書記院が認める唯一の形。期限はたいてい書いていない。団長は依頼を破りそうになると預かった名を差し出し、落ちるのは預けた者)。遼は、名を預けた者は帳簿に「本人として」載っていないから白地が見える、と気づく。遼は獣人に、依頼の文面に期限が書いてあったかを訊く(知らない)。「生きて引き渡す」の『生きて』は守られている、破っていない、と示す。夕方、ミレイの手で白い頁に約定を書く。「井原遼は、団長バルトの手にある、この者の名を、この者に取り戻す。この者は、それまで、白地の数を数える」。相手の名は無く、立会人もいない。紙切れだ、と獣人は言い、紙切れでいい、と胸の毛に押し込む。名は「ガル」。ガルは梁を裂いて薪を割る。台帳に「人、三」。翌朝、谷の向こうに炊事の煙が三本。ガル「人。名の無い」。
増えた設定・決まったこと
- ガルの見た目: 灰色の短い毛、首から肩が逆立つ、長い爪、鼻先が前に出る、耳は頭の上、目は黄色に近い茶色で瞳が縦。立つと遼より頭一つ高い。食べるとき目を閉じない(伏線16)
- ガルは村の中では寝ない。入口の石に背を村に向けて座る。夜のうちに薪を四本にした
- 名の質入れの文面: 『この者の名を、団長に預ける。以後、団長はこの者の名で約定を結ぶことができる』。本人は印を押すだけ。返す期限は書いてあればその通り、書いてなければ無い。団長は依頼を破りそうになると預かった名を書記院に差し出し、落ちるのは預けた者の名
- 白地の見え方の裏付け(伏線5回収): 名を預けた者は記録に「団長の持ち物として」載っていて、本人としては載っていない。だから見える。ミレイは「父の名が落ちて自分の名が半分記録に引っかかっている」から半分見える
- 遼が結んだ紙切れの約定(伏線12・13): 相手の名無し、立会人無し。文面に期限を書かない。ガルは紙を胸の毛の奥に持っている
- 団長の名はバルト(ガルが口にした)
- 帳面の白い頁: 第1話で一枚、第2話で一枚使い、残り五枚。以後の消費を追う(第8話・第12話で使う)
- 芋は十一個(大四・小七)、三つ食べた。火はまだ無い(火打ち石が無く、枯れ草が湿っていた。明日乾かす)
- ミレイは村の芋を「うちの芋」と呼んだ。遼はそれを覚えている
- ミレイ「あの人を切らないなら、あたしも切らないで」→ 遼「切らない」
- 遼の帳面の表記: 支出は「帳面、一頁」で統一
- 遼は「怖い。だが数えられる怖さだ」と言った。「数えられるうちは、なんとかなる」
次話への引き 谷の向こうの煙三本=名の無い流民。第3話で二十七人が来て三十人になる。井戸が一つでは足りない。最初の集落の約定。トビ登場。
第3話 三十人(2026-09-30 公開)
要約(300字) 谷を上がってきたのは二十七人。名を持たない流民で、全員が痩せ、全員が何かを抱えている。遼・ミレイ・ガルと合わせて三十人。井戸は一つ、芋は八つ(大三・小五)。遼は最初に順番を決める――歩ける者から汲み、汲み手は遼とガル、明日から交代。持ち物は「食べられるもの、容れもの、刃物、火を熾せるもの、寝るもの」の五つだけ申告させ、出すかどうかは各自に任せる。芋は八つのまま煮て汁にし、三十人ぶんに行き渡らせる。夕方、反故紙に三箇条を書く。一、人のものを言わずに取らない。二、数を偽らない。三、出て行くときは出て行くと言う。名は書かない、印も押さない。全員に印だけ書かせ、二十九の印が並ぶ。ガルは書かず「俺は入口だ」と石に戻る。汁は三回に分けた。三回目の途中で、二十七人めの男トビが鍋の前で泣く。三つまでしか数えられない元脱走兵で、荷を数えられず嘘を言って逃げた。遼は三つずつ区切って指を折る数え方を教える。翌朝、井戸の縄は三十二に戻り、谷の道に荷馬車の土埃が立つ。
増えた設定・決まったこと
- 二十七人の内訳: 男九、女十一、年齢の見当がつかない者六、先頭は四十くらいの女(裸足)
- 井戸の深さの測り方: 縄を下ろして水に触れるまでの結び目の数。水位が下がれば結び目は増える。平常三十二、三十人が汲んだ夜は三十四、翌朝三十二に戻る
- 芋の残り: 大三・小五の八つ(第2話で大一をガル、小二を遼とミレイ)
- 流民の持ち物(申告): 干した豆ひと掬い、塩ひとつまみ、水袋四(うち二つ穴)、小刀三、鉈一、火打ち石なし、鍋三、木の皿十四、毛布九、縄二尋
- 最初の集落の約定は三箇条だけ。「喧嘩しない」「働く」は書かない(守れない決まりと、数えられない決まりは書かない)
- 約定にならない理由は立会人がいないこと。名を書ける者は遼とミレイの二人いる
- 遼は石の印章を懐に持っている。押せば何が起きるかを知らないので、人前で試さない
- トビ(19): 元帝国軍の脱走兵。三つまでしか数えられない。三で区切って指を折る数え方を覚えた
- 帳面の白い頁: 第3話では使わず、反故紙(役場にあった裏が白いもの)を一枚使った。白い頁は残り五枚のまま
- 遼の口調: 流民への公の説明は敬体、ミレイとガルには常体
- ガルは日のあるうちは入口の石にいる。夜のうちに川下まで下りている
次話への引き 翌朝、谷を上がってくる荷馬車。三十人になった村に、外から初めて「物」が来る。第4話は度量衡(目盛りを誰が決めるか)。
第4話 升と秤(2026-10-07 公開)
要約(300字) 荷馬車は行商人ロッコ。村が「十四軒」とはっきり見えている。塩と替える物が無いので、廃屋九軒から釘四十一本・蝶番六つを外す(村のもの=全員のもの)。ロッコの天秤で三斤、商会の焼印のある升で一升を鍋に空ける。先頭の女が「浅い」と言い、遼が縄の結び目で測ると升は上げ底、天秤は左の腕が短い(鉄を左で三斤、右で五斤)。責めずに書き留める。穀倉の升を一升とし、女の結んだ縄で合の目盛り九本を刻む。ガルが梁の木で秤を作り、分銅と釣り合わせて欠いた石を一斤とする。量り方だけを反故紙に書き、全員が印。ロッコも上げ底の升の絵を描き、名を商会に預けていると明かす。量り直すと塩は七合、鉄は四斤に少し足りない。一升三合になるよう六合を足させる。連れの二人が残り、人三十二。「立会人がいない約定は、紙切れだぞ」。
増えた設定・決まったこと
- ロッコ(五十くらい。丸い帽子、短く刈った顎髭): 行商。「ロッコと呼ばれている」と名乗る。**名を二十年前に商会へ預けた(借銭の形。期限は書いていない)**ので、白地がはっきり見える。字が読めるかは不明。印は「上げ底の升の絵」(四角に横線一本)
- 商会の升: 底に焼印(丸の中に天秤、読めない字三つ)。上げ底。遼の縄で外七つと少し/内六つ。ロッコの一升=この地の七合
- ロッコの天秤: 何も載せない竿は水平。左の腕が短い。鉄を左で三斤・右で五斤。本当の重さは √15≈3.87斤。分銅(真鍮、刻み一本=一斤)は正しい
- この地の度量衡(第4話の反故紙。約定ではない): 穀倉の升を一升とし、内側に刻んだ九本の線が一合〜九合。村の秤(ガル作、梁の木、支点は縄を半分に折って決めた)で量る。ガルが分銅と釣り合わせて欠いた最初の石(爪で線一本)を一斤とし穀倉に置く。写しの一斤石が三つ。小石の山で半斤・四半斤を作れる。値段は書かない
- 穀倉の升: 外八つ・内七つと少し(遼の縄の結び目)。底の角が少し欠けている。目盛りは先頭の女が結んだ縄で決め、ガルが小刀で刻んだ
- 相場: 鉄三斤で塩一升(ロッコ)。今回は鉄四斤弱で塩一升三合(端はロッコがまけた)
- 塩の在庫: 一升三合=百三十勺。配らず壺に入れて穀倉に置き、汁に入れる分を毎日升で出して台帳に書く。一人あたり四勺(三十二人で百二十八勺)、残り二勺は別の小壺(熱を出した者の分)
- 反故紙は二枚目を使った(三箇条+量り方)。白い頁は残り五枚のまま。印の数: 遼の丸、ミレイの井戸の絵、二十七人の印、ロッコの升の絵。ガルは書かず「秤は、俺が作った」
- 遼は石の印章をまだ押していない(備考『紙切れ、二枚。印、まだ押さず。』)
- ロッコの連れ二人: 二十歳過ぎ。背の高い男と、片耳の欠けた男。名は無い(帳簿に載ったことがない)。ロッコの荷運び。村に残る。人、三十二
- 先頭の女: 四十。若い頃、市で豆を売っていた。「誰が得するかで決めた升は、次の日には誰かが損する」「手の覚えより、線のほうがいい」
次話への引き 「立会人がいない約定は、紙切れだぞ」。第5話で、遼は石印を押しても効かないことを知り、谷向こうの印章師シェラを訪ねる。