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この特集の作品

転生したら滅びる家の三女でした ~十年後の処刑を回避します~ 第三話 階段で転ぶ
北の湿地に、渡りの鳥が下りてきた。秋の狩りの朝、兄ギルベルトは賭けのとおり、黒馬グラウを厩に残し、遅くて動じない鹿毛のロートで出ていく。馬に乗れないセラは、屋敷で一日、帰りを待つしかない。兄は、馬から落ちずに、この秋を越せるのか。日程表の一行目に打った丸を見ながら、セラは雁の声を数えるのをやめた。

最弱テイマーが拾った卵は、竜でした 第三話 鉄くず
十四日目。分銅を三つ全部載せても、皿は下がったまま戻らない。チビは、卵込みで百三十グラムを超えた。測りの店の親父は、一言で鍛冶屋を指した。南の門の手前、昼でも炉の口が赤い店で、新しい百グラムを一つ打ってもらう。ロウが両手で竿を吊るしている間に、チビは上着の裾から出て、入口の脇の鉄くずの箱へ歩いていった。

悪女と呼ばれた侯爵夫人は、離縁状に判を押してから本気を出す 第三話 悪女の名で借りる
河港でいちばん口の悪い金貸し、ヴィナ。帳場の奥で、干した魚をかじりながら、アデルの頭の先から靴の先までを値踏みする。倉の塩は八か月動かず、麻は売られ、借財は三口。担保になるものは何も残っていない。アデルは、担保の話をしない。先に口にしたのは、ヴィナのほうだった。「あんたの名前は、河港では高く売れる」。

偽聖女として追放されたので、隣国で薬屋を始めました 第三話 しろ苔
石臼ができた日、街道の行商サシャが荷車を引いてやってくる。口が回る。値段に細かい。しろ苔、一袋三十。ミアは「はい」と言いかけて、ネイの顔を思い出す。仕入れ値を考えろ、とサシャは笑った。値切られる側に回ったら、最初の値に何を入れておくか。咳の止まらない行商人に、ミアは新しい臼で最初の薬を挽く。

死に戻り花嫁は、三度目の初夜で毒杯を割る 第三話 香炉を出す
六周目。香炉は、消すのではなく、出す。杯は卓に置き、花は捨て、窓は閉める。三つの毒を、鐘が十になる前に全部潰した。まだ生きている。だから私は、知らないことを一つ、知りに行った。兄が夜、私の部屋を出たあと、どこへ行くのか。狭い階段の上で、背中に何かが触れた。

ダンジョン対策課の窓口係 第三話 堅実な男
探索者の平井勉――ベンと呼ばれている――は、十年目の堅実な男だ。三年ごとの資格更新に、三年ごとに同じ時刻に来る。今回の書類は、一か所だけ前と違っていた。緊急連絡先の欄。黒木は、その違いを覚えている。覚えているが、訊かない。九月十八日、午後六時。第七層から十人が上がってくる日でもあった。

追放された毒見料理人、辺境で屋台を始めたら国が動いた件 第四話 塩
雪の前に、塩の値が三倍に跳ねた。南の湖から荷車が来ない、と街でただ一軒の塩屋は言う。隣の棚には、元の値のままの真っ白な塩。屋台の塩壺が空になり、リゼは干し肉を拭った塩を煎って汁をつなぐ。二日目、籠の女が割れた手を見せに来た。白い塩で漬けた蕪は、舌の先で苦かった。にがりの苦さではない。ダンと二人で、市場の真ん中に皿を二枚並べる。

白紙の国の帳簿係 第四話 升と秤
谷を上がってきた荷馬車は、行商人だった。塩がある。村には、売れるものが無い。遼は廃屋の屋根から古い釘を集め、塩と替える。秤は重さを量り、升は塩を量った。どちらも正しい顔をしていた。三十人の前で、遼は升の内側と外側に縄を当てる。数字が、合わなかった。

十八の朝に前世を思い出した測量士は、動く大地に百年の線を引く 第二話 地図は嘘をつく
十八の誕生日の翌朝、ノアと師匠オルドは岩壁の裾に三本の杭を打つ。答えが出るのは一年後だ。待てないノアは、前世で毎日使っていた三角で、谷を歩かずに測ろうとする。だが基線の両端から見た向きは、方位盤の同じ目に出た。三角が、描けない。同じ日の午後、岩壁沿いの畑で、境の石をめぐって二人の百姓が言い争う。地図では、境はもっと北のはずだ、と。オルドは、正しい線を引かなかった。

転生したら滅びる家の三女でした ~十年後の処刑を回避します~ 第二話 馬を替える
夏の初め、老騎士バーレが黒馬グラウに鳥の音を教え始める。だが最初の一度で、馬は慣れるより先に、怖さを覚えてしまった。秋まで三か月。セラは兄に本当のことを言わずに、馬を替えさせる方法を探す。使ったのは、嘘ではなく、賭けだった。同じころ、姉のもとに王都から一通の手紙が届く。母は、その手紙を、姉より先に読んでいた。
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