辞典「プロット型」から探す物語
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この特集の作品

偽聖女として追放されたので、隣国で薬屋を始めました 第三話 しろ苔
石臼ができた日、街道の行商サシャが荷車を引いてやってくる。口が回る。値段に細かい。しろ苔、一袋三十。ミアは「はい」と言いかけて、ネイの顔を思い出す。仕入れ値を考えろ、とサシャは笑った。値切られる側に回ったら、最初の値に何を入れておくか。咳の止まらない行商人に、ミアは新しい臼で最初の薬を挽く。

死に戻り花嫁は、三度目の初夜で毒杯を割る 第三話 香炉を出す
六周目。香炉は、消すのではなく、出す。杯は卓に置き、花は捨て、窓は閉める。三つの毒を、鐘が十になる前に全部潰した。まだ生きている。だから私は、知らないことを一つ、知りに行った。兄が夜、私の部屋を出たあと、どこへ行くのか。狭い階段の上で、背中に何かが触れた。

追放された毒見料理人、辺境で屋台を始めたら国が動いた件 第四話 塩
雪の前に、塩の値が三倍に跳ねた。南の湖から荷車が来ない、と街でただ一軒の塩屋は言う。隣の棚には、元の値のままの真っ白な塩。屋台の塩壺が空になり、リゼは干し肉を拭った塩を煎って汁をつなぐ。二日目、籠の女が割れた手を見せに来た。白い塩で漬けた蕪は、舌の先で苦かった。にがりの苦さではない。ダンと二人で、市場の真ん中に皿を二枚並べる。

白紙の国の帳簿係 第四話 升と秤
谷を上がってきた荷馬車は、行商人だった。塩がある。村には、売れるものが無い。遼は廃屋の屋根から古い釘を集め、塩と替える。秤は重さを量り、升は塩を量った。どちらも正しい顔をしていた。三十人の前で、遼は升の内側と外側に縄を当てる。数字が、合わなかった。

偽聖女として追放されたので、隣国で薬屋を始めました 第二話 鉄葉の湿布
借りた釘抜きを返しに、朝のうちに鍛冶場へ行く。片腕の鍛冶屋ネイは、動かない左腕を「痛くない」と言う。嘘だ。金槌を持ち替えるとき、顔が動く。ミアは初めて「治りません」と口にする。動くようにはならない。でも、痛みは引く。鉄葉を砕いて、煮出して、熱いうちに布に広げる。そして宿の主ボルグが、約束どおり、値段の付け方を教え始める。

死に戻り花嫁は、三度目の初夜で毒杯を割る 第二話 窓を閉める
五周目。倒れる私に、夫となる男は「次は、窓だ」と言った。だから今日は、窓を閉める。杯は受け取って、飲まず、割らず、卓に置く。兄には証文の話をしない。花は捨て、香炉は消し、そして鎧戸を下ろす。鐘が二つ、三つ。四周目より長く生きている。その閉めきった部屋の中で、水をかけて消したはずの灰から、甘さが立ちのぼった。

白紙の国の帳簿係 第三話 三十人
谷の向こうの煙は、二十七人だった。名を持たない者ばかりで、全員が痩せていて、全員が何かを隠している。芋は八つ、井戸は一つ。遼は紙を一枚使って、この土地で最初の決まりを書いた。盗まない、数を偽らない、出て行くときは言う。名は書けない。書けないから、印を書いてもらう。三十人めの男は、鍋の前で泣いた。

追放された毒見料理人、辺境で屋台を始めたら国が動いた件 第三話 干し肉
冬支度の季節に、宿が傷んだ肉を掴まされた。マーサは五十二年この街にいて、肉の目利きには自信がある。それでも掴まされた。軽薄な行商人ピートが荷を担いで現れ、仕入れの筋を割ってみせる。リゼは塩と煙で肉を立て直す。そしてピートが、王都で聞いた噂を一つ落としていく。舌の利く女を探している奴がいる、と。

白紙の国の帳簿係 第二話 名を預かる
追手だった獣人が、村の入口の石に座ったまま動かない。食べ物を出せば食べる。名を訊けば「団長が持っている」。名を質に入れられた者は、自分の名で約束を結べない。経理課長の井原遼は、獣人を縛っている依頼の文面から一語を見つけ、立会人のいない紙切れの約束を、初めて自分の名で結ぶ。

追放された毒見料理人、辺境で屋台を始めたら国が動いた件 第二話 黒パン
朝、衛兵隊長ダンとともに東の製粉所へ。主のゲルトは「袋の数は合っている」と言う。数は合っている。中身が違うだけだ。四十年石臼を回してきた老ハンスが、初めて主に逆らって麦だけを挽き、リゼは混ぜ物の無い粉で黒パンを焼く。街の人が、皿の底ではなく、パンの味で嘘を知る日。夜、月に一度の荷馬車は、来なかった。

偽聖女として追放されたので、隣国で薬屋を始めました 第一話 熱冷ましの根
聖女の力が無いと暴かれ、ミアは国境の外へ押し出された。もともと彼女がやっていたのは祈りではなく、祖母の手帳に書かれた薬の調合だった。三日歩いて着いた寂れた街で、宿の主が熱を出して寝込んでいる。道端に灰根が生えている。ここは王国の外で、薬は罪ではない。

死に戻り花嫁は、三度目の初夜で毒杯を割る 第一話 杯を割る
政略結婚の初夜、花嫁レナは毒杯を飲んで死ぬ。目が覚めると婚礼の朝に戻っている。二度目は寝室の花で、三度目は香炉で死んだ。四度目の朝、鐘が六つ鳴る。今日は杯を飲まない。受け取って、床に落として、割る。夫となる男が動きを止めて、言った。「……また、割ったのか」
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